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大阪高等裁判所 平成8年(ネ)2059号 判決

控訴人

藤井明

藤井潤子

右両名訴訟代理人弁護士

井上元

中井洋恵

被控訴人

三和工務店こと

森本亨

富士工務店こと

平山裕詞

右両名訴訟代理人弁護士

寺内清視

西口徹

千田適

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

二  被控訴人らは、各自、控訴人らに対し、各控訴人につきいずれも三〇〇万円(合計六〇〇万円)及びこれに対する平成五年四月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  控訴人らのその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、これを五分し、その二を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人らの負担とする。

五  この判決は、控訴人ら勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  当事者の求める裁判

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らは、各自、控訴人らに対し、それぞれ一二五七万六〇〇〇円及びこれに対する平成五年四月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

4  2、3につき仮執行宣言

二  被控訴人ら

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二  当事者の主張

(請求原因)

一  売買契約の成立等

1 控訴人らは、平成三年一一月二九日、被控訴人らから原判決別紙物件目録記載一の土地(以下「本件土地」という。)及び同目録記載二の建物(以下「本件建物」という。)を代金三五八〇万円で買い受けた。

2 仮に被控訴人富士工務店こと平山裕詞(以下「被控訴人平山」という。)が売主でないとすると、

(一) 控訴人らは、平成三年一一月二九日、被控訴人三和工務店こと森本亨(以下「被控訴人森本」という。)から本件土地及び本件建物を代金三五八〇万円で買い受けた。

(二) 被控訴人平山は右売買契約の仲介をした。

3 本件建物は平成四年三月ころ完成し、控訴人らは被控訴人らから同年四月中旬に本件土地建物の引渡を受けた。

二  本件建物の瑕疵

1 本件建物は、隣家との距離が一〇センチメートルしか離れていないのに、その壁の中は、標準の仕様である吸音性断熱材はもとより普通の断熱材すら使用せずに空洞の状態であり、また、本件建物の外壁はモルタル塗りとするとの約定であったにもかかわらず、金属サイディング張りであり、そのため隣家の小さな物音が聞こえるという瑕疵がある。

2 被控訴人らは、本件建物が一戸一棟式の建物であるにもかかわらず、隣家と併せて二戸一棟の長屋と申請して建築確認を受けている。本件建物は一棟の建物としては建築基準に達しない違法建物であり、最悪の場合、控訴人らは、行政庁から本件建物の除去を命じられかねない。従って、本件建物は建築基準法違反の瑕疵がある。

三  本件土地の瑕疵

本件土地は道路と1.75メートルしか接していないから、本件土地には建築基準法四三条一項本文に規定する二メートルの接道義務を満たしていない瑕疵がある。

なお、被控訴人らは、覚書による合意により接道義務の問題は解消していると主張するが、右覚書は当事者全員が意味の分からないまま署名押印したものであるから無効というべきであるし、仮にそうでないとしても、それだけで法律上の接道義務を満たすことになるとは考えられない。更に、仮に接道義務を満たしている可能性があるとしても、右合意により接道義務を満たしているかどうかは専門家でも判断困難であり、実際にも合意のとおり履行される見込みは乏しいから、控訴人らが本件土地を第三者に売却しようとしても、本件土地が接道義務を満たしていない、あるいは通路についての権利関係が不明確であるとの理由で、適正な宅地としての売却が困難であり、少なくとも資産価値の低下は免れず、本件土地に瑕疵があるといわざるを得ない。

四  被控訴人らの責任

1 被控訴人森本の責任

(一) 不法行為

被控訴人森本は、本件土地建物に前記二項及び三項のような瑕疵があることを認識しながら、控訴人らに対し、右瑕疵につき何ら説明することなく、瑕疵のない物件であると誤信させて控訴人らに本件土地建物を買い受けさせた。

(二) 売主としての債務不履行

本件土地建物売買契約の時点において、本件土地の特定はされていなかったところ、売主である被控訴人森本は、宅地として適正な範囲の土地を分筆して控訴人らに引き渡す義務があったにもかかわらず、これを怠り、道路と1.75メートルしか接しないという建築基準法上の接道義務に違反する形状で分筆したものであるから、契約の対象となる土地を引き渡すべき債務について不履行責任を免れない。

(三) 瑕疵担保責任

防音性能、建築基準法上の接道義務充足の有無あるいは建築基準適合の有無は一般人には明らかでないところ、被控訴人森本は控訴人らに対し、これらに関して全く説明しなかったから、本件土地建物の前記瑕疵は隠れた瑕疵に該当する。

2 被控訴人平山の責任

(一) 不法行為

被控訴人森本に同じ。

(二) 売主としての債務不履行

被控訴人森本に同じ。

(三) 瑕疵担保責任

被控訴人森本に同じ。

(四) 仲介業者としての債務不履行

仮に被控訴人平山が本件土地建物の売主でないとしても、不動産仲介業者として、買主に対し、適正な物件をあっせんする義務があるにもかかわらず、本件土地建物に前記二項及び三項のような瑕疵があることを知りながら、あるいは右瑕疵が生じたことにつき積極的に加担しながら、控訴人らに対して何ら説明せずに仲介して本件土地建物を買い受けさせたものであるから、不動産仲介業者としての債務不履行責任を免れない。

五  控訴人らの損害

1 断熱材等不使用による瑕疵についての損害

本件建物の断熱材等不使用による瑕疵を是正するには防音工事が必要であり、右工事費用として五一五万二〇〇〇円を要する。

2 建築基準法違反等の瑕疵についての損害

本件建物につき適法な建築確認を受けていない瑕疵及び本件土地の接道義務違反等の瑕疵による損害は合計二〇〇〇万円を下回らない。

六  よって、控訴人らは、被控訴人らに対し、連帯してそれぞれ一二五七万六〇〇〇円(損害合計額二五一五万二〇〇〇円の二分の一)及びこれに対する履行遅滞後(本訴状送達の日の翌日)である平成五年四月九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(請求原因に対する被控訴人らの認否)

一1  請求原因一項の1のうち、被控訴人平山が本件土地建物の売主であること及び売買代金額は否認し、その余は認める。

2(一)  同一項の2の(一)のうち、売買代金額は否認し、その余は認める。

(二)  同一項の2の(二)は認める。

3  同一項の3は認める。

二1  同二項の1のうち、本件建物と隣家との距離が一〇センチメートルしか離れていないこと、本件建物の壁の中に吸音性断熱材や通常の断熱材を使用していないこと、本件建物の外壁が金属サイディング張りであることは認め、その余は否認する。

本件土地建物売買契約において、吸音性断熱材はもとより通常の断熱材すら使用して建築する旨の特約はなく、また、被控訴人森本において、本件建物に標準仕様として断熱材を使用する義務はない。

また、本件建物に使用されている金属サイディングは、断熱目的のための高断熱ウレタンフォームを裏打ちした外装材であり、防音・遮音効果も期待できるものである。

2  同二項の2は否認する。

三  同三項のうち、本件土地が道路と1.75メートル接することは認め、その余は否認する。

被控訴人らは、平成四年四月一四日ころ、原判決別紙図面表示イ土地、同ロ土地及びハ土地の各所有者において、各所有者が将来建築確認申請等をする場合は、同図面記載の赤色部分を通路として当該所有者が使用することを承諾する旨記載した覚書を作成し、右覚書に各土地所有者らの署名押印を得た。

右覚書により建築基準法上の接道義務は満たされている。

四  同四項ないし六項は争う。

第三  当裁判所の判断

一  当裁判所は、控訴人らの被控訴人らに対する本訴請求は、本判決主文二項に記載の限度で理由があるが、その余は理由がないと判断する。

その理由は以下のとおりである。

二  請求原因一項に対する判断は、原判決一一頁四行目の冒頭から同一二頁一行目の末尾に記載のとおりであるから、これを引用する。

ただし、原判決一一頁四行目の「請求原因1(一)(1)」を「請求原因一1」に改め、同行目の「供述」の次に「(原審)」を、七行目の「原告」の次に「ら」をそれぞれ加え、一一行目の「請求原因1(一)(2)①」を「請求原因一2」に改め、同一二頁一行目の「同②の事実、」を削り、同行目の「請求原因1(二)」を「請求原因一3」に改め、同行目の末尾に続けて次のとおり加える。

「なお、売買契約締結当時、被控訴人らは本件土地を含む分筆前の四一三番二の土地上に住宅三戸を建築し一戸ごとに分譲する計画であった。従って、本件建物は建築に着手されていなかったし、本件土地も分筆されていなかった。平成四年三月末日ころ右の三戸が建築され、また敷地として同年二月一三日本件土地ほか二筆に分割され、前記のとおり引き渡された。敷地の状況は原判決別紙図面表示のとおりであり、イが本件土地に該当する。売買代金は契約書上三〇一〇万円とされていたが、控訴人らは、平成四年四月三日までに売主である被控訴人森本に同額を支払ったほか、被控訴人平山にも追加工事代金、工事代金として合計五七〇万円を支払った。従って、実質的な代金は合計三五八〇万円である。なお、控訴人らは、持分の割合を各二分の一として本件土地建物を取得した(以上について甲一、二の一ないし五、七、八、控訴人潤子(原審)、被控訴人ら各本人)。」

三  本件建物の断熱材不使用等による瑕疵の主張に対する判断は、原判決一二頁三行目の冒頭から同一四頁二行目の末尾に記載のとおりであるから、これを引用する。

ただし、同一三頁四行目の「ところ、」の次に「同控訴人は当審においても一階部分について他家の自販機あるいはエアコン室外機からと思われる騒音が気になることを強調しているが、同じ外壁構造による前記隣家からそのような感想がもらされている形跡はないこと(被控訴人ら各本人)に照らすと、」を、同頁六行目の「ついて」の次に「本件建物の壁の中に吸音性断熱材や通常の断熱材を使用するなどして」を、同頁一〇行目の「ある。」の次に「なお、本件建物の外壁が金属サイディング張りであること自体が外部の音が伝わりやすい原因であることを認めるに足りる証拠はない。」をそれぞれ加える。

四  本件建物につき適法な建築確認を受けていない瑕疵の主張について

1  甲六の一・二、一〇、原審被控訴人平山及び控訴人藤井潤子各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、本件建物は一戸一棟式の建物であるにもかかわらず、隣家と二戸一棟の長屋として建築確認申請をして右建築確認を受けていること(接道要件を形式上満たすための彌縫策であったと推認される。)、被控訴人らは、右事実を認識しながら、控訴人らに対して右事実を告げなかったこと、控訴人らは本件土地建物の引渡を受けた後の調査により初めて右事実を知ったことが認められる。

2  右事実によれば、被控訴人らは、本件建物につき適法な建築確認を受けていないことになり、また、右建築基準法違反の事実は本件建物の隠れた瑕疵に該当するというべきである。

3  そして、被控訴人平山は、仲介業者として、被控訴人森本は売主として、本件建物につき適法な建築確認を受けていない事実を説明する義務があるにもかかわらず、控訴人らに何ら説明せず、本件建物を買い受けさせたものであるから、控訴人らに対し、説明義務違反(不法行為)による損害賠償義務がある(被控訴人森本は、瑕疵担保責任に基づく損害賠償義務も負う。)。

五  本件土地の接道義務違反の瑕疵の主張について

1  争いのない事実、甲一、三ないし五、一一、一四、一五、二〇、二五の一・二、原審被控訴人森本亨及び被控訴人平山裕詞各本人尋問の結果、原審及び当審控訴人藤井潤子本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 本件土地及び隣地の形状は原判決別紙図面表示のとおりであり、道路に接する本件土地(右図面表示イの土地)の幅は1.75メートルしかなく、そのままでは建築基準法四三条一項本文の規定する二メートルの接道義務を満たしておらず、本件土地の隣地である同図面表示ハの土地のうち、本件土地に接する幅員0.25メートル部分の提供を受けることにより、右接道義務を満たすことになる。

(二) 関係土地の分筆の経緯は前記のとおりである。すなわち、本件土地、ハ(桝見所有)及びロ(田辺所有)の各土地は元一筆の土地であったが、ロ土地について地上建物の建ぺい率等の関係で南側に幅0.5メートルの空き地を確保したため、本件土地及びハ土地の道路と接する部分の間口が合計3.5メートルとなり、それを両土地で分割した結果、道路と接する間口の幅がそれぞれ1.75メートルとなり、右図面のような形状で分筆されることになった。これらの分筆は被控訴人らが共同して行った。

(三) 右分筆により、本件土地及びハ土地が接道義務を満たさないこととなるため、被控訴人らは、平成四年四月一四日ころ、本件土地、ロ土地及びハ土地の各所有者が将来建築確認申請等をする場合に備えた方策として、「イ、ロ、ハ各所有者間にて将来的に通路として使用する為に後日、各々が行政機関との間に許認可申請を提出するに付き、互いに別紙図面のとおり認知しイ、ロ、ハ各所有者間で捺印及び承諾することを確約し各所有者に変更が生じてもこれを継続するものとする。(赤色、黄色着色部分を通路とする。)」旨記載した覚書を作成し、右覚書に各土地所有者らの署名押印を得た。

(四) 被控訴人らは、控訴人藤井潤子に対し、右覚書に署名押印を求める際、「他の隣地所有者が敷地を通行させないと言ったら困るので、その了承をもらったから、この書類に署名押印してもらいたい。」という程度に説明し、建築基準法の接道義務や右接道義務と右覚書との関係等については全く説明しなかった。そのため、控訴人らは、本件土地だけでは建築基準法上の接道義務を満たしておらず、右覚書作成がその要件を満たすための苦肉の策であることに気が付かなかった。

(五) 控訴人らは、前記引渡を受けた当時、本件土地は建築基準法上問題のない土地であると考えていたが、その後建築基準法の接道義務の関係等で問題があることを知るに至った。

2(一)  本件売買建築及び敷地の分筆、建築は前記の経緯で行われたものであるところ、土地とその地上の建物の売買契約は、通常その敷地自体で接道要件が満たされているものとして行われるというべきである。本件の場合にも、売買契約書及び重要事項説明書上、敷地が接道要件に欠けることについて何も記載されていないし、契約当時被控訴人らがそのようなことがあり得ることを説明した形跡はなく、控訴人らが前記のように欠点のない土地を取得できると信じていたことが明らかであるから(控訴人潤子(原審・当審))、それ自体で接道要件を満たす土地の売買契約であったと認めることができる。ところが、本件土地はこの要件に欠けるのであるから、敢えてそのように分筆して売買の目的土地とした被控訴人らには、これによって控訴人らが被った損害について、債務不履行(被控訴人ら)及び瑕疵担保(被控訴人森本)並びに不法行為(被控訴人ら。被控訴人平山にも説明義務違反がある。)による損害賠償義務がある。被控訴人らは、覚書により接道要件の問題は解消していると主張するが、本件土地自体に右のとおり欠ける点がある以上、右義務を免れることはできないし、控訴人らが覚書の調印により接道要件関係を問題にしないことを了承したとまで認めるに足りる証拠はない。

(二)  もっとも、覚書により接道要件に問題がないこととなれば、控訴人らに損害はなく、あるいは損害は少ないということになる可能性がある。しかし、前記覚書は、その内容がはなはだ理解しにくく、これに調印した各所有者の意思がどのようなものであったか判然としない。被控訴人ら各本人の説明によると、右覚書は、ハ土地の所有者が控訴人らのため二五センチメートル幅の土地を通路として提供し、ロ土地の所有者がハ土地の所有者のため五〇センチメートル幅の土地を通路として提供することを約束したものであるとのことであるが、そのように記載されているわけではなく、実際にそのような形で分筆がされなかったことに照らすと、真実そのような合意がされたのかどうか疑わしい。特に、ロ土地とその地上の建物の建ぺい率の関係で相当無理があると思われ(ロ土地上の建物は右五〇センチメートル幅の土地部分を除く部分一杯に建築されており、一部は五〇センチメートル幅の部分にかかってさえいる。甲一五、検甲二ないし四、三九、四〇)、覚書に関する控訴人潤子に対する説明が前記のようなものであったことを併せ考えると、そのような約束が本当にされたとはにわかに信じがたいのである。少なくとも、覚書によっても、本件土地の接道要件の充足が将来における隣地所有者の協力態度により左右され得るという大きな問題が解消しているとは認められない。

六  控訴人らの損害

甲二九号証によると、不動産鑑定士である原口友良は、平成四年四月当時の本件土地建物の価格について、接道要件に瑕疵がない場合は、積算価格で合計三五四〇万円(土地一九〇〇万円、建物一六四〇万円)、収益価格で合計二〇五〇万円、右瑕疵のある場合は、積算価格で合計二四八〇万円(土地一三三〇万円、建物一一五〇万円。ともに三割減になる。)、収益価格で合計一七九〇万円と評価していることを認めることができる。そして、右証拠と弁論の全趣旨によると、接道要件に前記のような瑕疵のある土地建物の取引価格はそうでない場合と比較して相当下回ることを認めることができる。しかし、右不動産鑑定士のした積算価格に係る減額割合は、相続税算出の場合の最高減価割合及び精通者意見等によるというのであるが、おおむね最大幅に近い減価をしているものと認められる。このことと、接道要件に問題のある土地建物については市場価格把握のための経験的資料が十分とはいえないこと、従って損害額の認定は控え目にせざるを得ないこと、なお、本件ではともかくも覚書があり、ロ土地及びハ土地所有者の協力が全く得られないとは限らず、また協力がない場合でも覚書の理解の仕方により実際問題としては建築確認を得られる可能性がないとはいえないこと(寝屋川市建築主事に対する調査嘱託の結果)も考慮せざるを得ないこと、なお建物についても前記確認に関する瑕疵があるがこの点も経済的評価は容易でないこと、控訴人らは現在本件建物に居住し、その建替はもとより本件土地建物の売却が緊急の問題として具体化しているとまでは認めがたいこと等に照らすと、前記瑕疵により控訴人らが被った損害は前記三五八〇万円を基準としてその一五パーセントから二〇パーセントまでの中間値程度にあたる合計六〇〇万円と認めるのが相当である。従って、被控訴人らは、連帯して、控訴人らに対し、それぞれその二分の一である三〇〇万円(合計六〇〇万円)及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成五年四月九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

七  以上によると、控訴人らの被控訴人らに対する本訴請求は、右の限度で理由があるから認容すべきであり、その余は理由がないから棄却すべきである。よって、右請求を全部棄却した原判決は相当でないから、これを右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民訴法六七条、六一条、六四条、六五条を、仮執行宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加藤英継 裁判官 伊東正彦 裁判官 安達嗣雄)

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